Smiley face
写真・図版
佐藤武嗣・論説主幹
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 定点観測として、過去20年にわたり十数回取材してきた会議がある。そこで実感したのが、「米国と中国によるデカップリング(分断)が、アジア地域で本格的に始まる」という変化だ。

 5月末からシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)を取材した。アジア・太平洋地域や米欧の国防相らが集う同会議は、米中などが自国の主張を展開する演説がメインだが、同時に会場のあちらこちらの部屋では、二国間・多国間の様々な会談が繰り広げられ、胸襟を開き安保問題を議論して相互理解を深める、貴重な「対話の場」でもある。

 第一の変化は、ここ数年、国防相を派遣してきた中国が、今回は軍高官の派遣を見送ったことだ。事実上の欠席を決めた背景には、汚職などで軍内部が混乱し、表舞台に高官が登壇するリスクを避けたとの見方が多い。ただ、昼食会で雑談した私服姿の中国軍幹部は「我々には地域で存在感を示せる別の会議が複数ある。今や対中批判一色の会議に出る必要性が薄れた」と語った。

 第二の変化は米国だ。演説し…

共有